home > original works >  第1部 過去を想う少女









俺が最初に「君」を見たのは、

キミがアイツの隣で笑っているのを見たとき。

キミには決まった人がいたはずなのに、どうしても俺を見て欲しいと思った。

きっと一目惚れだった。

運命が繋がっている様に思えてならなかった。













遠くから見るキミは幸せそうにアイツの隣で微笑んでいたけれど、

それもいつの日か悲しい笑顔へと変わっていった。

アイツがキミの隣に立てなくなった日。

一人寂しくホームに佇むその姿がとても儚く思えた。



薬品の匂いが立ち込めるそこは愛しそうに君のことを語らいつづけるアイツがいて

俺はその後にアイツからキミを託された。


「優希なら、ずっと見てたから信用できる。優希の目はいつも紫苑を追いかけていたから。」


見破られた現実につき通せない嘘。


キミは俺の存在に気付かなくて、俺はただ見守るだけ。

どうしてこんなに遠いのかな?

どうしてアイツとの差は広がるばかりなのかな?

君の中のアイツは絶大で生きる支えで

俺の手は

君に届かない。


届かせたいのに キミは逃げていくばかり。

嫌、俺が捕まえきれないだけ。

捕まえたい、君を。

願いつづけていたけど、アイツはキミにやさしく微笑んで



去っていった。



俺には任せろの一言も言わせず、

ただ勝ち誇ったかのように 君の心を持っていった。

諦めかけた思い 何度も諦めかけた そう思っていた矢先の事故。



キミを助ける事が出来て、

キミを助けるように施されて、

キミを守るように頼まれて、

やっと

この手で捕まえられた。



「アナタ、誰?」


脅えた君の声。

聞きなれた、聞きたかった声。

感極まってつい叫んでしまった俺。

情けなくて、アイツに「ごめん」と心の中で謝った。


『自信持てよ、優希――』


ふと聞こえた、「親友」の、そして「人生最大のライバル」の励ます声。


「俺は、長谷川 優希。無事で良かったよ、・・・・芹沢さん。」


彼女に俺の名前を刻み込むように、

俺の存在を見てもらうように、勇気を振り絞って呼んだ名前。

彼女はビックリして俺を見て見つめて・・・・



俺は密かに彼女に恋心を抱きながら

アイツの隣で笑う彼女を見守り、

俺はあいつに託されて

今度は彼女を愛して過ごしたい。


―――神様という存在が居るのなら、あなたの近くに居るアイツに届けてくれませんか?


俺が彼女に捧ぐ愛情を。


例え二番でも彼女が俺を愛してくれるなら、

きっと、俺の人生の中で満足できる。

俺は報われない恋をするのだろうか。

今、その答えは出ない。


死ぬ時にそれが判るから。


お前はどうだった、カイ。


『素晴らしい、人生だったよ。人を愛せた喜びが、』

わかったから。


病室の窓に映る風景が変わり始め、アイツが俺に向かって放った言霊。


俺はお前の分も、彼女を愛するだろう。

心にはお前が常に居るから。

だってそうだろう?――――――――・・・













update : 2006.03.07
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