彼女はふわふわとしていて
目を離せばアイツがどこかに連れていってしまうのではないかと
正直、不安だった。
ずっと、一緒にいられたらと何度願っただろう?
「大丈夫、デスカ?」
片言の日本語のように傾けられた言葉は、
時が立つごとにハッキリしてきて
それと同時に その声の主の顔もハッキリしてきた。
「大丈夫ですかーーー!?」
少しの隙間から聞こえてくる、駅員さんであろう声が聞こえてくる。
「大丈夫です!」
ハッキリしない記憶から、それはわかった。
あぁ、死ねなかった。
いや、死ぬつもりなどなかったのだが、何故かそう思う自分がいた。
「あの、本当に大丈夫ですか?」
曖昧な意識の中で聞こえて来るこの人に私は安堵感を覚えた。
「・・・・・」
「もしかして、自殺願望者・・・だったの?」
余計な事だったかな?と、相手は頭を掻いて私の顔を覗き見る。
「いえ。違います。」
何となく、遠まわしに尋ねてくる相手を、私は疎まなかった事が不思議でならない。
隣にある、銀色の塊が、ゆっくり動き出して、
少し身体をよじらせると抱きとめられたままの状態である事がわかった。
大の大人が2人。
ギリギリのスペースでは身体が密着していたらまぁ、致し方ない。
見つめ合うのも何なので俯いて見せると、命の証が、鳴り響いているのが聞こえて
なぜか懐かしく思えて泣きたくなり、それにすがりたくて気付けば頬に一筋
冷たい雫が零れていた。
相手に悟られないように、私はそれを隠していたつもりだった。
「泣かないで―――――・・・・」
その言葉は、自然と口から零れていた。
彼女が静かに泣いてる気がした。
驚いた彼女が、慌てて俺の方を見て なぜわかったのか、と言う眼差しで見てきた。
「あ、いや。何か泣いてる気がしたから。」
「・・・・」
俺はずっと憧れてたから。
今はいない、アイツと笑いあって過ごすキミを見たときから、
心の片隅にいる、あなたを見つめていたから。
不思議な気持ちに包まれて、つい彼の顔を凝視していた。
そして、自然と落ちついている自分に気がついたときがとても不思議だった。
この人はいったい誰なのだろう。
誰?
この人は誰?
コノヒトハダレ?
「アナタは誰?」
「え、俺!?」
普通に尋ねたつもりなのに、彼は驚いてじっと私の顔を見つめつづけていた。
運命という言の葉とは、