「人は飛べる。」
そんな事を言ったのはどこの誰だっけ?
私はこの世界のどかにいる、新しい私の「片翼」を
探しながら生きていくに他ならないんだ。
運命に逆らう事は出来ないから、
私はひとり、
あの時の余韻に浸りながら、
たった一つのラブソングを口ずさんでいる。
もうすぐ、あなたに会える。
その季節が、そっと・・・・
春は生命を生み、
夏には生命を育て、
秋には生命を献上して、
冬に死に行く。
私は今までに何人の私を殺したのだろう。
それすらもう、覚えていない。
生きる意味とはなんなのか?
私はなぜ今を歩いているのだろう?
私は、なぜ彼と一緒に死を迎えられなかったのだろう。
彼の優しい微笑が脳裏を掠めて、
妄想の中で差し出した手を取ろうと、足を踏み出した。
「危ないッ!!」
後ろの方で聞こえた叫び声は、あたりに響いたけれど、
私は何の憶測もなく、その声に耳を傾けることなく、
倒れていくのが、神経に伝わるだけ。
アブナイ・・・
あぁ、そうか。
私は彼と離れて、もとの生活に戻ったのだと、自覚した。
足が、プラットホームの端を蹴っていたのだ。
そして、不意に聞こえる電車の音。
――――――コレで死ねるだろうか。
私の頭を掠める彼の顔が、悲しそうに歪んでいた。
カイ、私もそっちへ行きたいよ・・・。
線路に強く身体を打ちつけ痛いと感じるが、
それは虚ろであり、私は私でなかった。
そう、まるで心の平穏をなくした、
生きることに余裕のない、野生動物では無く、
「鬱」。
私はあなたに抱きとめて欲しかった。
夢の中でもいいから、ずっと望んでいた。
彼と会うのは、いつも病室のベッド。
「特別」な彼との、唯一の抱擁方法。
人肌が恋しいと思った事は無いけれど、
今日はなぜかソレが懐かしくそして愛しく思えた。
電車の汽笛は近いのに、
私は力強さを感じると一瞬にして陰と何かが通りすぎる風を感じた。
私は目の前に過ぎ去っていく銀色の、
「あっぶねぇー・・・。」
ギリギリ間一髪。
ふと、急に頭上で声がして、私は暗闇の中で声が下方向をじっと目を凝らして見ていた。
何かが私を惹きつける。
引力―――・・・・
『俺と同じ魂持った奴愛してやってよ。』
彼の声が頭の中で響くのに、
私は気が付いた。
彼の死を受け止めきれていないのだ、