home > original works >  第1部 過去を想う少女
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あのね、聞いて欲しいことがある。

私の中にある、一生忘れたくないものは

私の中で、一生とどめて覚えててもいいのかな?






















学校に行き始めた。












私の中ではちょっと戸惑いを覚えていて、

それはみんなが知っているようにカイの事であったりしている。

私がカイの事で落ち込んでる時期はたくさんの時間をかけてその傷を癒していくけど、

その大半が、長谷川君がカイを忘れないように私に思い出を話してくれたりした。

彼は何でそんなことまでしてくれるのだろう?




「俺はただカイが唯一その短い人生の中で愛した人に

 カイが生きた証を覚えていて欲しいだけだよ。」

俺だけのカイじゃないし。



彼は笑ってそんなことをいっていた。

きっと彼にとってもカイの死は辛かったと思う。



私が彼に癒された分、私はなぜか彼の中にある傷を








癒したいと思い始めていた。








教室中の人たちが私のことを気遣うのはとてもありがたい。

でもね、


優しくされても感じるのは彼を思って過ごした時間が鮮明に思い出されて


悲しくなる感情ばかり。




―――――『悲しくなったら、いつでも俺のところに来ていいから』




彼のその態度が、彼を取り巻く雰囲気が今の私には心地いい。


カイを亡くした痛みを舐めあうからなのか。


でも、今はそれでもいいと感じてしまうの。

それくらい、今の私には支えが欲しいの。


支えがない私はどうなっちゃうのか、知らないから。






「あの、長谷川君、・・・・居ますか?」

彼の教室の前。

カイの教室の前。

行き慣れた、見慣れた雰囲気がそこにはあった。


あ、カイはあそこで長谷川君と笑いあっていたのか、と。


私の言葉に戸惑う彼のクラスメイトが私の顔を眺めている。

確かに、今まで面識の無かった人を

カイと今まで一緒に居た私が急に接近するのだから疑っても仕様が無い。

「長谷川・・・ちょっと待ってくれる?」

「いいよ、ありがと。宮田さん」

「あ、長谷川・・・」

宮田さんといわれた女子生徒はどうやら学級委員長のようであり、

私自身もカイの告別式のときに挨拶をしていた彼女を見た記憶がある。

「どうかした?」

私の思考を中断して私の目の前に覗かせた彼の顔が目に入り

私は瞬間に目的を思い出した。

「・・・・」

「芹沢?」

少し呼びなれたその声にどきりと胸を震わせる。

ちょうど、カイの死から4ヶ月が経つ今日。


月命日になると私は色々と思い出す癖をこの頃つけて、

改めて、どうして長谷川君の存在に気づかなかったのか、

いろんな出会いを大事にしたいとか、



「頭、ごちゃごちゃ。」

「は!?」

「あ〜・・・・何か、思い返してたらごちゃごちゃしてきて」

「何言ってんだ?それ、いつもジャン」


笑いながら言ってくれる言葉に落ち着きを感じてしまう。


「今日、月命日だから」

「うん、アイツに相談した方がいいな」

彼はただ私の言いたいことに頷いて―――――

なのに私の脈拍は上昇してて〜・・・





だから、そこが判んないんだって!!






「どう思う、カイ」





カイの墓前に座って一方通行に話す。




「悲しくならないと、長谷川君に会いに行っちゃだめなのかな?」




サワサワ・・・


風が吹き通る。

答えが出ない。


恋の気配が近づく。



私はそれに気づかない。





なぜなら、私の恋は時を止め






それに気づいた彼が微かに私の恋心を否定している気がする。



















update : 2006.03.07
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