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ニュートンの法則 01


 ニュートンは「万有引力」の法則を見つけると同時に、

 恋に落ちる法則をも見つけ出した。

 今も昔も、恋の仕方は変わらない。




 Q. リンゴはどうして紅くなるのか?

 A. 恋に落ちる合図を出しているから。


 だからあたしは、あなたに恋をしたのかな?



 
1.「好き」の一言。



 大人になると、「好きです。」って、なかなか言えない。
 大人になると、「好きです。」って、なかなか思えない。

 運命の人を見つけ出すのはとても難しくて、さらに付け加えると、たった一人の人を見つけ出しても、あたしはチキンなわけで・・・・

 でもさ、恋人が出来たら好きな人には好きと言いたいでしょ。
 だけど、恥ずかしくて言葉にできないんだよ。

 告白のときには、それはそれは、今もっている勇気をすべて使い切るような、そんなドキドキする時間。



「ゴメン。他に好きな子がいる」

 せっかく勇気を出して告白したのも、結局は玉砕となる。

 その日の夜は大泣きして、次の恋に前進しようと誰もが決意する。

 あたしだってそう。

 いつまでも、うじうじと終わった恋に悩まされるほど、未練たらしくない。

 そう思った瞬間、流していた泪をすべてぬぐって、クローゼットにしまってある、今まで好きだった人の写真、それから、あげる勇気もないくせに買ってしまった誕生日プレゼントをすべて、ごみ箱の中に放り投げた。

 そうしているうちに、なんだか終わってしまった恋の事はどうでも良くなっていって、結局のところあたしは、その人のことが、本当に好きではなかったことに気が付いた。

 みんながかっこいいと誉めるから、自分もかっこいいと思ってしまって憧れてしまう。

 あたしは恋に恋をしていた。

 ・・・・・なんてあっけない結末。

 こんなにあっけない結末なのなら、恋なんてふざけてる。

 愛に絶望しているあたしは、恋に対しても「この程度か」と見切りをつけて、心に闇を落としたことは否定しない。



 恋なんてもうしないと決めてから月日は流れた。

 高校は共学に通ってるけど男友達も作らず、彼も作らず、友達何人かとグループを組んで、遊んでそれなりに勉強して過ごそうと思った。

 グループの中には彼氏もちの子も何人かいたけれど、彼女たちの恋バナが始まるとあたしは、急に冷めたように話題から抜け出して、事情を知ってくれている付き合いの長い皐月と違う話題で盛り上がった。

 皐月にももちろん彼はいる。

 けれど皐月の場合は、どちらかと言うと大人の恋愛かもしれない。

 高校生ながらにして、会社員の若手営業マンの彼と、それはそれは色濃い付き合いだとボソリと話すだけ。

 皐月の話ならあたしは嫌味ったらしく、自慢気に聞こえないから、素直に話を聞く事は出来る。

 あくまでも、ただ聞くだけ。

 でも、皐月はそれで良いとあたしに言ってくれる。


 どうして恋をするの?あなた達は。
 どうして恋をしなくちゃいけないの?あたしたちは。

 愛と憎しみ、その絡み合いはとても面倒でしょ?


 そんなことを思っていると、友達の理奈から「今までに告白したことある?」って聞かれた。

 あたしの答えはとりあえずYES。

 別に隠す必要もないって思って、「一度だけ告白はしたことあるけど、今まで、一度も付き合ったことない」って答えると、意外な反応が返ってきた。

 「もったいなぁ〜い!」

 ええっ!?って感じに度肝を抜かれる。
 あたしの顔は人並み。背も小さいし、パッチリ二重って言うわけじゃないし、考えてることからして、お子様思考だと思う。

 周りの友達は、あたしのことを「可愛い」って言う形容詞を使うけど、あたしからしたら、その言葉はお世辞にしか聞こえない。

 だって、可愛い子は中身からして可愛いでしょ??
 美人な子は所作からして綺麗でしょ??

 あたしは、大雑把だし、勉強はそこそこできるけど、これと言った自慢もないし、何より人見知りで、話し上手でもない。

 もろ『聞き役』徹底だから。
 自分でも面白みのない子だなって思うのは常々だ。


 でも、こんなあたしに皐月はこう言ったの。
 「お試しの恋愛でもしてみたらいいじゃない。」って。


 あたしの心情からして、お試しとか遊びとかで人を弄ぶようなことは、出来なくてむしろ、後々に別れることを考えると、そういう軽いのりで付き合わせてしまったことが、あとの自分を考えると心苦しいの。


 そんな風に、恋愛興味なしに皐月は心底心配したんだろうね。


 あたしは無理やりにっつーか、だまされて合コンを友人たちにセッティングされちゃうんですよ。
 どうしましょっ!?



 んで・・・・あたし、根が真面目なんだろうなぁってつくづく思うの。



 今まで、これと言った夜遊びはしたことないし、友達と例え夜遅く遊びに行ったとしても、きっちり日付内には帰っていたし、むしろ告って振られて以来、男の子苦手だし、面と向かって何を話せばいいのかさえ、あたしには困惑するばかりだった。

 皐月の突然の企みによって、話に乗った理奈と夏実は嬉々として、合コンのメンツの話をしていた。


 恋愛に興味ないっつってんのに・・・・。


 無理やり連れてこられた、カラオケボックスで、あたしは注文したジュースを口に含みながら、その光景をただ傍観していた。


update : 2008.01.25
reupdate:2010.09.11


加筆修正済 連載期間 2008.01.25〜
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