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□■Suger and Whisper ~Sweet white day?~ ■□―Naoki side―


 俺は今、無性に腹が立っている。




 それは、2月14日の世で言う、バレンタインデーの日。
 その日は全国的に雨。俺の強制的なる休日の日・・・だったはずだ。
 だけど、世のCafé、ケーキや宝石店etc…は、バレンタイン一色もちろん俺の雨の日のお馴染みの店、
Café:Leiseで働く彼女の若菜ちゃんは今の時が稼ぎ時でとても大変そうにしている。
・・・のは、誰が見てもわかるんだよ!!
 でも、俺には納得できない点がいくつかあり、最近では晴れも続いて彼女を避け続けている形になっている。
 どうして俺が愛しい彼女を避けているか?

 事の発端はこうだ。

『永倉さん、ハッピーバレンタインです!!』
『え、若菜ちゃん俺にくれるの?』
『はい、いつもお世話になってますからね』
『うわ、ありがとうね。あ、そうだホワイトデーは楽しみにしててよ。実はね・・・』
『え、本当ですかぁ!?わーい楽しみぃv』

 2月14日、理恵子さんの店は日頃の感謝を込めて、店を上げて常連客にバレンタインのチョコを上げていた。
 それは、俺も店に1日中いて何回もやり取りされた場面だったからちょっと、ムカムカするとは思ったけど、
でもそれは俺が文句を言えるようなことじゃないから、目の端についていたんだけど男らしく
グッとそこのところは我慢していた。
 けど、俺の我慢の糸が保ったのはそこまだった。
 夕方近く、永倉という男が1人店の方に現れると、今までのやり取りが交わされたが、上の会話でもあったように、
そいつに対してだけはどうも対応が違ったんだ。

 俺と若菜ちゃんは付き合い始めてもう2ヶ月半を過ぎている。
 でも、2ヶ月たった今でも、俺たちの関係は世で言うABC判定のB止まりだ。
 なぜかというと、良い所でいつもタイミングを逃したりするからだ。
 それに俺はそろそろ我慢できなくなり始めている。

 そこに、俺の目下で行われた俺の知らない野郎とのヒソヒソ話。
 それを見た瞬間の俺の堪忍の緒は、ブチッとそれはそれは、ひどい音を立てて切れましたとさ。
 そして、そうとは知らない若菜ちゃんは、急に会計へと立った俺を見て慌ててレジへと駆けてきた。

「あれ?直輝さん、今日は帰るんですか?」
「・・・・あぁ、うん。雨止みそうだし、仕事が忙しいからね。」

 俺が彼女に返した返事は、あり得ないくらい低くて、怒りを込めているものを彼女に対して発したかもしれない。
 あからさま過ぎるのにも関わらず、意味も分からずに嬉々として話しかけてくる彼女の笑顔が、俺には一瞬だけ
恨めしく思えた瞬間だったかもしれない。

「そうなんですか?大変なんですね、お仕事。あ、それから・・・今日、夜時間とかありますか?」

 不安気に俺の轟々とした雰囲気を察しない彼女は、可愛らしく上目遣いで夜の予定を聞いてきた。
 俺はその彼女の姿に切れた緒を一気に修正しかけたが、目の端に映ったあの男の姿を感じて、
すぐにまた心が凍りついた。

「今日は余裕が無い。それからしばらく夜の迎えにも来れそうに無い。」
「え・・・?」
「ゴメン、雨続きで仕事がやれなくて、今すごく苛々してるんだ。」
「あ、ごめんなさい。」

 その言葉を聞いてか、彼女は俺の態度の変化に気がついて、焦ったように会計をし始めた。
 仕事は単なる言い訳だった。

 本当に俺がキレた理由。それは、〝嫉妬〟だって自分でもすぐに分かっていた。
この日、俺は常連客の1人として貰えるはずだったチョコすら、彼女から渡されるなかった・・・・・・。



 たかがバレンタインでチョコを貰えなかったあの時の俺は、相当大人気ない奴だった。

『ちょっとぉここの所、雨振っても全然顔見せないじゃない。どうかしたのぉ?ちゃんと生きてる?』
「別に・・・。ただ個展が近くて焦ってるだけですよ。雨続きだったから。」

 あの日から2週間。その間に雨が降ったのは、1回だけ。
 でも、俺はあの日以降、店へ足を運んではいなかった。
 かといって、彼女との連絡が途絶えたわけではない。毎日受信する若菜ちゃんのメールは、1日会った出来事と、
彼女らしい気遣いのメール。

****仕事忙しい?今日はね・・・

****お疲れ様!!家に帰り着いたよ。お仕事どう?

 正直に言うと、彼女と会えない日って言うのは自分で言っといてなんだけど、辛いことには変わりない。
 でも、俺は彼女に察してほしくなかったのかもしれない。
 俺と違う男と喋る彼女を見るだけで、モヤモヤ、ムカムカする肝の小さい男の部分を。
 それを見られて幻滅されたくなかった。

 それをさせるのは何か・・・・。

 俺が、彼女より5つも離れているってことだ。
 男の余裕。
 そんな見栄を俺は彼女の前で張っていたかったのかもしれない。

 そう思うと、なんて情けないんだろう、今の俺は。

 自分の情けなさを考えながら、自分の部屋に寝転ぶと俺はそこに飾ってある一点のものに目を向けた。


 [-Schatz- By Naoki.H]と書かれているのは、片手を広げたくらいの大きさに収められた、
人物を描かれている油絵だった。
 それはとても淡い色を放ち、心からその絵に心ごとを求める雰囲気をかもし出す絵で、
最近ではそれを握り締めるのが日課だった。

 そう、直輝こと・・・北条直輝は世界を羽ばたく世界が注目する画家だった。
 油絵の具というのは、湿気に弱いため雨の日だと良い状態でキャンバスに載ることはまずない。
付け足すと、油絵の具は湿気を吸うとカビを生やし、時には外気の水分によってチューブの中で
固まってしまうことがある。
 さらに、画具自体にもあまりよろしくないので、油絵を保管する美術館等は常に湿度計と温度計
まだ空調については特別な管理下においてある。

 オイル臭い部屋はほとんどが若菜の人物画で敷き詰められていた。
 俺はそれを見ているだけでも、目を閉じても、脳裏に若菜が浮かんでは、
情けなかった自分の行動に嫌気をさしていた。

「・・・・・・・・・・・情けねぇ・・・・・・・・・。」

 ポツリと呟いた声はただ部屋の空気に吸い込まれいくだけ・・・・。

「そうですか?」
「え?」
「私的には、そんなところも直輝さんらしいかと思うんですけど。」
「・・・・・若菜、ちゃん」
「でも、私の方がもっと情けない、かも。」

 そう少し寂しそうな声を響かせながら、俺の前に現れたのは久しぶりに見る恋焦がれた存在だった。
 俺は慌てて上半身を起こすと持っていた絵を床に置き、相手の顔を正面から見るように目線を上げた。

「若菜ちゃん、どうして・・・」
「・・・・・・・・・・・何ででしょう。」
「?」

 そういった彼女は、絵の具で汚い床なのに抵抗もせずにそこに座り、俺の顔を見ながら視線を合わせてきた。
すると彼女は、「あのね、」と言いづらそうに言葉を濁しながら、話し始めた。

「まだ分からないかもしれないけど、私ね、」
「・・・・」
「結構、ヤキモチ妬きだよ。」

 頬を染めながら言う彼女は俺から言うのもなんだけど、可愛らしくて今まで悶々としていた気持ちなんかを
一気に吹き飛ばす威力を持っているかもしれない。

「だからね、直輝さんの顔が見れないと・・・不安、になる。」
「俺もだよ。」
「え?」
「俺もね、ヤキモチ妬いたよ。」
「・・・・いつ?!」

 俺の呟いたその一言に彼女は意外なほどに反応して、俺の肩に両手を置いて目を大きくしながら、
俺の答えを期待しているようだった。
 それを見た俺は、心のどこかで易々と答えを与えるのは何だかいやな気分に追いやられて、
俺はニヤリと笑って見せると、

「胸に手を当てて考えてみたら、分かるかも。」

なんて言ってみたり。
 そしたら彼女は俺の答えにきょとんとして、俺の肩から両手を離すと、素直に自分の胸に手を当てて顔を傾げてみた。

「むぅ・・・・。もしかして、バレンタイン・・・・かな?」
「何で、そう思うの?」
「え、だって、チョコ、あげてないし。」
「ふぅ~ん」
「ふぅ~んって、・・・うわっ!!」

 必死になりながら答える彼女はやっぱりどこか可愛くて、俺の我慢の糸も切れてしまった。
 彼女を抱きしめながら床に倒れると、俺はすぐに唇を重ねて貪るようにキスをした。

「むっ・・・ん」
「分かってるじゃん。」

 俺がにやけながら彼女に言うと、若菜ちゃんは悔しそうな顔をすることもなく、それを聞いて納得したような顔をしていた。

「そうなの?私が永倉さんにチョコ上げたとき、すご~く険しいぃ顔してたから、もしかしてって思ったんだ。」
「うん、それで?」
「それで、・・・・」

 彼女が言葉をつなげると、若菜ちゃんはいそいそと自分のバックをあさりだした。

「あのね、あの時の言い訳をすると・・・・ね、」
「?」

 そういいながら、彼女がバックから取り出して俺に差し出してきたものは、手のひらサイズの大きさで綺麗に
ラッピングをされた正方形のものだった。

「永倉さんってね、週一くらいでお店に来てくれる常連さんで、いつもねアミューズメント系のチケットをくれる人なの。」
「うん」
「それでね、バレンタインの日にチョコくれたら、永倉さんの方から私にチケットを回してくれる約束を理恵子さんに頼んでて・・・・
どうせなら、直輝さんとデートしたいと思って。」

 正方形の箱を差し出しながら上目遣いで見てくる視線は、確実に俺の理性を攻撃していた。
けれど、逆に裏で動いている黒幕の存在を思いつくとその理性も抑圧されていた。

「・・・・・つまり、俺は梨恵子さんに嵌められた・・・・?」
「や、えっと、その・・・・うん。」

 控えめに言う彼女の言葉は俺の勘を肯定していたけれど、俺はこの会えなかった日を理恵子さんという
偉大な存在の手のひらで踊らされていたことがとても悔しかった。

「まじかよ・・・・」
「でもね!!私も悪いなって思ったから、ちょっと遅れたけど・・・・正真正銘の本命チョコ、です。」
「え・・・」
「今日さっき作ったばかりだから食べれる、はず。・・・・受け取って下さい。」
「・・・・・・はい。」

 俺は差し出された箱を彼女の前で丁寧にラッピングをはずしていくと、
そこにはとてもおいしそうなクラッシックショコラが入っていた。
 それを見て感動した俺はしばらくの間それを眺めていると、若菜ちゃんが横から顔を覗かせて、
箱に添えられたプラスチックのフォークで一口サイズに切り、「あーん。」と言って俺の口の前に差し出してきた。
 その状況についていけない俺は、ただきょとんとして彼女を見つめて停止していると、

「直輝さん、あーん、してください。」

 言った台詞に恥ずかしさを感じていない彼女に俺は時々驚かされる。
 でも、パクッと食べた一口サイズのケーキはビターのほろ苦い味がした。

「俺、倒れそう・・・・」
「え?どうし・・・・・・!?」

 彼女の言葉が続く前に、俺は自分の中に溢れんばかりの彼女への愛を伝えたくて、そっと彼女に口付けた。
 すると、彼女もそれを素直に受け止めてキスに答えると、自然と二人の体が床に倒れた。

「んっ・・・ん。」

 彼女の可愛い声が俺の理性を刺激する。
 今まで感じたこともない、独占欲。欲望。
 啄ばんでは合わせる瞳の輝き。すべてが愛おしくて、堪らない。

「な、おき・・・・・さん。」

 唇を首筋に這わせればビクッと彼女の体は飛び上がる。
 その反応は、俺を喜ばせることを知らない。

「若菜ちゃんさ、すべてが俺を喜ばせるよね。」
「ん?」
「だから、手放せないんだけど・・・・。」
「離さないで。」

 そして俺は、彼女に何回目かのノックアウトを食らって、彼女の体を足の先から髪の毛の先まで、愛しつくすんだろう。


喰らって
泣かして
啼かして
そして、最後には優しく抱いてあげる。


「あっ・・・あ、ん・・・・・・・・・・・・は、・・・・・・・・ぅん」

胸の頂の蕾を舐めて、甘噛みして

「あっ・・・・・・やっ・・・なっ・・・おきっ・・・・!!!・・・・・・・・・ぅっん」
「若菜・・・・わかな・・・・・」

摘んで

「ああっ・・・・ん、はっ・・・・・・・・くぅんっ・・・・直輝っ・・・・さん・・・・」

手でやさしく包みこんでは、円を描くように揉んでやる。

 挿し込んだ熱の棒ははち切れんばかり、彼女を求めている。

 挿し込んでは秘弁入り口ギリギリまで引き、そして一気に押しこんでやると、それに合わせて彼女の腰も一緒に揺れる。

「ん、あっ・・・・・・はぁあ、あっあっあっあっ・・・・・・・・・んっ」
「若菜っ・・・・・ん、わかなっ・・・・」


「あぁん・・・・ィクっ・・・・イッちゃうぅ・・・・あっあああああっ!!」
「くっ・・・・・はっ・・・・・若菜!!!」

イク瞬間の何とも色っぽい啼き声と顔。
俺自身を締め付けて、最後の一滴も余すことなくきつく吸い上げるソコ。


「愛してるよ、若菜。」

 言葉で伝え切れないほどに、君を。
 俺の才能を持ってしても、現し切れないくらいに、君を。



 心が穏やかになった俺は、今隣りに眠る存在を腕に抱き、サラサラな彼女の髪を残り一本まで愛おしく撫で続けた。


 目を覚ました君は何と言うだろうね?

「『モカ』飲みます?」・・・・・かな。






―Naoki side fin.―


+こちらの小説は、GALCIAL HEAVENの鹿室さんのみのお持ち帰りが出来ます。+
 フリー小説ではありません。


update : 2007.03.01
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